SESエンジニアという言葉を聞いたことがあっても、その詳細な働き方や将来性について理解している人は少ないかもしれません。SES（システムエンジニアリングサービス）という契約形態で働くエンジニアは、日本のIT業界において非常に重要な存在です。本記事では、SESエンジニアの仕事内容や求められるスキル、年収、メリット・デメリット、さらには将来性まで詳しく解説していきます。
SESエンジニアの基本を知ろう
SESエンジニアとは？
SESエンジニアとは、クライアント企業のプロジェクトに技術者として参画し、開発やインフラ構築、システム運用などの業務を行うエンジニアのことを指します。SES（システムエンジニアリングサービス）は、クライアント企業と契約を結んだIT企業（SES企業）がエンジニアを派遣し、業務委託として業務を遂行する仕組みです。
この契約形態は、企業が必要なタイミングでスキルの高いエンジニアを確保できる点が大きなメリットです。一方で、SESエンジニア自身はプロジェクトごとに異なる現場で働くため、柔軟な適応力が求められます。
また、SESエンジニアはクライアント先で業務を行うため、自社のオフィスで働く機会は少なく、現場ごとに環境が異なります。そのため、プロジェクトごとに新しい環境に適応する能力が必要となります。
SES（システムエンジニアリングサービス）の仕組み
SESは、クライアント企業とエンジニアをつなぐ契約形態の一つです。クライアント企業とSES企業（雇用元）の間に契約が結ばれ、その契約に基づいてエンジニアが業務を提供する形になります。
この契約形態の特徴として、エンジニアは派遣社員ではなく、あくまで「業務委託」としてクライアント先で働く点が挙げられます。そのため、業務の指示はクライアントではなく、自社の上司（SES企業の管理者）から受ける形になります。
また、SES契約では「準委任契約」と呼ばれる形式が一般的です。これは、成果物の納品ではなく、労働時間や業務遂行に対して報酬が支払われる仕組みです。そのため、受託開発のように納期や成果物に対する責任が厳しく求められるわけではなく、プロジェクトに貢献しながら経験を積むことができるのが特徴です。
SESエンジニアと受託・派遣エンジニアの違い
SESエンジニアは、受託開発や派遣エンジニアと混同されることがありますが、明確な違いがあります。
受託開発との違い
受託開発は、システム開発を請け負い、成果物として納品する契約です。クライアントからの要望に基づき、自社のチームでシステムを開発し、納品する形となります。一方、SESエンジニアは特定の成果物を納品するのではなく、プロジェクトに参画し、開発の一部を担う形です。
派遣エンジニアとの違い
派遣エンジニアは、労働者派遣法に基づく契約であり、クライアント企業から直接指示を受けて働きます。一方、SESエンジニアは、自社（SES企業）の指示を受けるため、業務の進め方や管理体制に違いがあります。また、SES契約では「労働派遣法」が適用されないため、契約期間や待遇に関しても異なるルールが適用されます。
SESエンジニアの働き方の特徴
SESエンジニアは、さまざまな現場で業務を行うため、柔軟性が求められます。その働き方の特徴を詳しく見ていきましょう。
- プロジェクトごとに異なる環境で働く
SESエンジニアは、契約期間ごとにプロジェクトが変わることが多く、新しい環境に適応する能力が必要です。 - スキルアップの機会が多い
多様なプロジェクトに関わることで、幅広い技術を学ぶことができます。特に、新しい技術に触れる機会が多いため、キャリアの成長につながります。 - 契約期間が決まっている
SES契約は数カ月～数年単位で契約されることが一般的です。契約終了後は、新たなプロジェクトにアサインされることになります。 - エンジニア自身の市場価値が問われる
プロジェクトに応じて求められるスキルが異なるため、エンジニア自身が成長し続けることが求められます。特に、技術スキルだけでなく、コミュニケーション能力や問題解決力も重要です。
SESエンジニアが活躍する業界・分野
SESエンジニアは、IT業界のさまざまな分野で活躍しています。特に需要が高い業界は以下の通りです。
- Web・アプリ開発
スマートフォンアプリやWebシステムの開発プロジェクトは、SESエンジニアが多数活躍している分野です。特に、JavaScript、Python、Javaなどのスキルが求められます。 - 金融・保険システム
大規模な業務システムの開発や運用を担うプロジェクトが多く、セキュリティやデータ管理の知識が必要とされます。 - インフラ・ネットワーク
クラウド環境の構築やサーバー運用、ネットワーク設計など、IT基盤を支える業務が中心です。AWSやAzureのスキルが求められるケースが増えています。 - 組み込みシステム開発
自動車、家電、IoTデバイスなど、組み込み系のシステム開発にもSESエンジニアが携わることが多いです。C言語やC++のスキルが役立ちます。
このように、SESエンジニアは幅広い業界で活躍できるため、自分の得意分野を活かしながらキャリアを形成することが可能です。
SESエンジニアの仕事内容と役割
SESエンジニアの主な仕事内容
SESエンジニアの仕事内容は、プロジェクトによって大きく異なりますが、主にシステム開発、インフラ構築、運用・保守などの分野で活躍します。
具体的には、以下のような業務が挙げられます。
- システム開発
SESエンジニアの多くは、Webシステムや業務アプリケーションの開発に携わります。使用するプログラミング言語は、Java、Python、PHP、JavaScriptなどが多く、クライアントの要件に応じた機能の実装を行います。 - インフラ構築・運用
AWSやAzureなどのクラウド環境を用いたインフラ設計・構築もSESエンジニアの重要な業務の一つです。企業のサーバーやネットワーク環境を整え、安定稼働を実現するために必要な設定や運用を行います。 - システム保守・運用サポート
既存システムの維持管理もSESエンジニアの業務の一環です。システムのエラー対応やパフォーマンスの改善、セキュリティ対策などを担当することが多く、トラブルシューティング能力が求められます。 - テスト・品質管理
システム開発の一環として、テスト設計や実施を行うこともあります。単体テスト、結合テスト、システムテストを通じて、システムの品質を担保することが重要です。
このように、SESエンジニアの業務は多岐にわたります。プロジェクトによって担当するフェーズが異なるため、エンジニア自身がどの分野でスキルを磨くかを意識することが大切です。
SESエンジニアのプロジェクト例
SESエンジニアが携わるプロジェクトの例を挙げると、以下のようなものがあります。
- 金融系システム開発プロジェクト
銀行や保険会社の業務システムの開発。特に、大規模なデータ管理が必要なため、高いセキュリティが求められる。 - ECサイト構築プロジェクト
JavaScriptやPHPを用いたWebシステムの開発。ショッピングカートや決済システムの実装を担当。 - クラウドインフラ構築プロジェクト
AWSやAzureを活用したインフラの設計・構築。サーバーレスアーキテクチャの導入を行うケースも増えている。 - 官公庁向けシステムの保守・運用
国や自治体が利用する業務システムの維持管理。障害対応やセキュリティ強化を担当。
これらのプロジェクトでは、エンジニアとしての技術力だけでなく、チームでの協力やクライアントとの調整能力も求められます。
SESエンジニアの1日のスケジュール
SESエンジニアの1日は、プロジェクトの内容や企業文化によって異なりますが、一般的なスケジュールは以下のような流れになります。
9:00 – 出社・朝会
プロジェクトの進捗状況をチームで共有し、当日のタスクを確認。
10:00 – 開発業務
設計書に基づいたプログラムの実装や、サーバー構築作業を行う。
12:00 – 昼休憩
クライアント先で働くため、同じプロジェクトのメンバーと食事をすることが多い。
13:00 – コードレビュー・動作確認
実装したコードをチェックし、チーム内でレビューを行う。
15:00 – 会議・打ち合わせ
クライアントとの進捗確認や、技術的な課題の解決策を話し合う。
17:00 – テスト・デバッグ作業
開発したシステムが正しく動作するか検証し、バグがあれば修正。
18:30 – 退社
残業が発生することもあるが、最近はワークライフバランスを重視する企業も増えている。
このように、SESエンジニアの業務は開発やインフラ構築だけでなく、クライアントとの調整や会議なども重要な役割を担っています。
SESエンジニアの役割と求められるスキル
SESエンジニアの役割は、プロジェクトの成功を支える技術者として貢献することです。そのため、単にコードを書くだけでなく、クライアントのニーズを理解し、適切なソリューションを提供することが求められます。
また、以下のようなスキルが必要です。
- プログラミングスキル
Java、Python、JavaScriptなどの言語を扱えることが求められる。 - インフラ・クラウド技術
AWSやAzureを用いたサーバー管理の知識があると有利。 - コミュニケーション能力
クライアントやチームメンバーと円滑にやり取りできることが重要。 - 問題解決能力
プロジェクトの課題を的確に把握し、最適な方法で解決する力。
これらのスキルを磨くことで、SESエンジニアとしての市場価値を高めることができます。
SESエンジニアのキャリアパス
SESエンジニアのキャリアパスには、さまざまな選択肢があります。
- 上級エンジニア・リーダー職へ進む
プロジェクトリーダーやテックリードとして、チームをまとめる立場になる。 - 受託開発や自社開発企業へ転職
SESでの経験を活かして、より上流の業務に携わる。 - フリーランスエンジニアとして独立
スキルと実績を積んだ後、高単価の案件を受けるフリーランスとして活動。 - ITコンサルタントやPM（プロジェクトマネージャー）へ転向
クライアントの課題を解決するコンサルタントとしての道もある。
このように、SESエンジニアとしての経験を活かし、多様なキャリアを選ぶことができます。特に、技術力だけでなく、マネジメントスキルやビジネス視点を身につけることが、より良いキャリアにつながると言えます。
SESエンジニアに必要なスキル
SESエンジニアに求められる基本スキル
SESエンジニアとして活躍するためには、技術力だけでなく、プロジェクトの状況に応じた適応力やコミュニケーション能力も必要です。SESエンジニアに求められる基本スキルは、主に以下の4つに分類されます。
- プログラミングスキル
システム開発を行う場合、プログラミング言語の習得が必須です。案件ごとに使用する言語は異なりますが、特にJava、Python、JavaScript、PHPなどの言語が多くのプロジェクトで使用されています。 - インフラ・クラウド技術
最近ではAWSやAzureなどのクラウド環境の利用が増えているため、クラウドの知識も重視されます。Linuxサーバーの基本的な知識やネットワークの設定・管理スキルも求められることがあります。 - 問題解決能力
SESエンジニアは、プロジェクトごとに異なる環境や技術に対応する必要があるため、課題を素早く特定し、解決する能力が求められます。特に、エラー対応やバグの修正では、論理的思考力が重要です。 - コミュニケーション能力
クライアントとのやり取りや、チーム内での報連相（報告・連絡・相談）が重要になります。技術力が高くても、円滑なコミュニケーションができなければ、プロジェクトでの評価が低くなることもあります。
これらのスキルをバランスよく磨くことで、SESエンジニアとしての市場価値を高めることができます。
プログラミングスキル（言語別解説）
SESエンジニアとして活躍するには、使用するプログラミング言語の理解が欠かせません。以下に、特に需要の高い言語を紹介します。
- Java
Javaは、業務系システムやWebアプリ開発で広く使われており、SES案件でも最も需要が高い言語の一つです。特に金融系や大規模システムでの使用が多く、安定した案件供給があります。 - Python
データ分析、AI開発、Webアプリ開発など、幅広い用途で使われています。最近では、Pythonを活用した自動化スクリプトの開発案件も増えています。 - JavaScript
フロントエンド開発に欠かせない言語であり、ReactやVue.jsなどのフレームワークと組み合わせて使われることが多いです。SESのWeb開発案件では必須となることが多いです。 - PHP
WordPressやECサイト構築など、Webシステム開発においてよく使われる言語です。特に、小規模～中規模の開発案件でよく見られます。
プログラミングスキルは、SESエンジニアとしてのキャリアに直結するため、どの言語を学ぶべきかを見極め、自分の強みを作ることが重要です。
インフラ・クラウドの知識
SESエンジニアの業務では、クラウドやサーバー管理の知識が求められるケースも増えています。特に、以下の技術は習得しておくと、インフラ系の案件で活躍できます。
- AWS（Amazon Web Services）
クラウドインフラの代表格であり、企業のシステム運用に欠かせない存在です。SES案件でも、AWS環境の設計や運用を担当する業務が増えています。 - Linuxサーバー管理
多くの業務システムがLinux上で動作しているため、サーバーの基本操作や設定方法を学んでおくと役立ちます。 - Docker・Kubernetes
コンテナ技術を活用するプロジェクトが増えているため、DevOpsに関する知識があるとSES案件の選択肢が広がります。 - ネットワークの基礎知識
TCP/IPやVPN、ファイアウォールの設定など、ネットワーク関連の知識も持っておくと、インフラ案件での対応力が向上します。
クラウド技術の習得は、SESエンジニアの市場価値を上げるための有効な手段となります。
コミュニケーション能力の重要性
SESエンジニアは、クライアント先で業務を行うため、単に技術力があるだけではなく、適切なコミュニケーションが取れることが求められます。特に以下の点が重要になります。
- 報連相（報告・連絡・相談）を徹底する
プロジェクトを円滑に進めるためには、自分の進捗状況や課題を適切に報告することが大切です。 - クライアントの要望を正しく理解する
SESエンジニアは、クライアントのニーズに応じた業務を行うため、ヒアリング能力が求められます。 - チームワークを大切にする
プロジェクトでは、他のエンジニアやPM（プロジェクトマネージャー）と協力する場面が多いため、チームでのコミュニケーションがスムーズに取れることが重要です。 - リモートワーク時のコミュニケーション力
最近では、SESエンジニアもリモートワークが増えています。オンライン会議やチャットツールを活用しながら、適切な情報共有を行うスキルが求められます。
SESエンジニアとして成功するためには、技術力とコミュニケーション力の両方をバランスよく磨くことが大切です。
自己管理と問題解決能力
SESエンジニアは、プロジェクトごとに環境が変わるため、自己管理能力が求められます。特に、以下のような点を意識することが重要です。
- タスク管理を徹底する
プロジェクトのスケジュールに沿って、自分の業務を適切に進めるスキルが必要です。 - 主体的に学習を続ける
技術の進化が速いため、新しい技術をキャッチアップする意識を持つことが求められます。 - トラブル対応力を身につける
システム障害やエラーが発生した際に、迅速に原因を特定し、解決策を考えられる力が必要です。 - ストレス管理を意識する
SESエンジニアは、クライアント先で働くため、人間関係や業務内容によるストレスを感じることもあります。適度な休息やリフレッシュを心がけることが大切です。
SESエンジニアの年収と報酬体系
SESエンジニアの平均年収
SESエンジニアの年収は、企業の規模や契約形態、スキルレベルによって大きく変わります。一般的なSESエンジニアの年収は以下のようになっています。
- 未経験者（0～2年）：年収300万～400万円
- 中級エンジニア（3～5年）：年収400万～600万円
- 上級エンジニア（6年以上）：年収600万～800万円
- フリーランスSESエンジニア：年収800万～1000万円以上も可能
新卒や未経験からSESエンジニアとして働く場合は、年収300万円台がスタートラインとなるケースが多いですが、経験を積むことで収入アップが見込めます。特に、AWSやPython、AI・データ分析関連のスキルを持つエンジニアは高単価案件に携われることが多いため、キャリアの方向性を意識することが重要です。
また、SES企業によってはボーナスや昇給の制度が整っていないケースもあり、年収アップのためには転職やスキルアップが不可欠となることがあります。
正確なSESのデータは公表データを取得できておりませんが、Dodaの技術職のような年収データもありました。比較的イメージと近いのではないでしょうか？ご自身の給与や転職先の給与や業務内容とも見比べながらご判断の材料にしていただければと思います。
SESエンジニアの収入が変動する理由
SESエンジニアの収入は、プロジェクト単価や契約条件によって大きく変わります。具体的には、以下のような要因が影響を与えます。
- プロジェクト単価（エンジニアの単価）
クライアントからSES企業に支払われる金額（エンジニア単価）が高いほど、給与も高くなります。経験豊富なエンジニアほど単価が上がりやすいです。 - 契約形態
SES企業によっては、エンジニアの給与を「固定給」にする場合と、「案件単価の何％を支払う」形にする場合があります。後者の方が給与が高くなる可能性があるため、契約内容の確認が重要です。 - 技術スキル
JavaやPHPといった汎用的なスキルよりも、クラウド技術（AWS・GCP）やAI関連スキルの方が単価が高い傾向にあります。特に、高単価の案件に携わるためにはトレンド技術の習得が必要です。 - SES企業の利益率
SES企業は、エンジニアの単価の一部を利益として得るため、企業ごとに利益率が異なります。一般的には、エンジニアの報酬が「契約単価の60～70％」に設定されるケースが多いですが、利益率が高い企業では報酬が抑えられることもあります。
これらの要素を考慮しながら、給与アップを狙うには「高単価案件に携われるスキルを身につけること」と「適切なSES企業を選ぶこと」が重要になります。
SESエンジニアの給与アップの方法
SESエンジニアとして年収を上げるには、単純に経験を積むだけでは不十分です。意識的にスキルアップやキャリア戦略を考えることが求められます。給与アップの方法として、以下の4つが挙げられます。
- トレンド技術を習得する
- クラウド技術（AWS、GCP、Azure）
- AI・データサイエンス関連スキル
- DevOps（Docker、Kubernetes）
- 上流工程に関わる
- プログラミングだけでなく、設計・要件定義に関わる
- PM（プロジェクトマネージャー）やPL（プロジェクトリーダー）を目指す
- 転職を検討する
- SES企業によって報酬体系が大きく異なるため、給与が低いと感じたら転職を検討
- 自社開発企業や受託開発企業への転職も視野に入れる
- フリーランスとして独立する
- フリーランスSESエンジニアとして活動すると、単価が倍以上になるケースもある
- 案件獲得のための営業スキルや交渉力が必要
これらの方法を活用しながら、自分の市場価値を上げていくことがSESエンジニアとして成功する鍵となります。
フリーランスSESエンジニアの収入
SESエンジニアとしてフリーランスに転向すると、年収800万～1000万円以上も目指せるようになります。フリーランスの場合、企業を介さずにクライアントと直接契約を結ぶことができるため、収入が大幅にアップする可能性があります。
フリーランスSESエンジニアのメリットとデメリットを整理すると、以下のようになります。
メリット
- 案件単価が高い（企業を介さないため、報酬がそのまま自分の収入になる）
- 自由な働き方ができる（リモートワークや案件選択が可能）
- スキルに応じた収入を得られる（高スキルほど高収入を実現しやすい）
デメリット
- 安定性が低い（案件が途切れるリスクがある）
- 営業力が必要（自分で案件を獲得する必要がある）
- 税金や社会保険の管理が必要（確定申告を自分で行う必要がある）
フリーランスを目指す場合は、エージェントを活用した案件探しやクラウド技術・設計スキルの習得を進めると、より高収入を得られるチャンスが増えます。
SES企業ごとの給与体系の違い
SES企業は多種多様であり、給与体系も企業ごとに大きく異なります。給与体系の主な違いは以下の3つのパターンです。
- 固定給型
- 毎月決まった給与が支払われる
- 安定性があるが、案件単価が上がっても給与が変わらない
- 歩合制型（案件単価の〇％を支払う）
- 契約単価に応じて給与が変動する
- 自分の市場価値が給与に反映されやすい
- 固定＋歩合型
- 一定の固定給＋案件単価に応じたボーナス
- 安定性と収入アップのバランスが取れている
SES企業を選ぶ際には、給与体系だけでなく、福利厚生や教育制度も確認することが重要です。特に、技術研修や資格取得支援制度がある企業では、スキルアップしながら給与アップを狙うことができます。
SESエンジニアのメリット・デメリット
SESエンジニアとして働くメリット
SESエンジニアの仕事にはさまざまなメリットがあります。特に、未経験からでもエンジニアとしてのキャリアを築きやすいことや、多様なプロジェクトに関われることが魅力です。具体的なメリットを見ていきましょう。
1. 未経験からIT業界に入りやすい
SES企業の多くは、未経験者を採用し、研修やOJTを通じてエンジニアとして育成する体制を整えています。
そのため、文系出身者や異業種からの転職者でもエンジニアになれるチャンスがあるのが特徴です。特に、プログラミングスクールを受講した後にSES企業へ就職するケースが増えています。
2. 様々なプロジェクトに関われる
SESエンジニアは、短期間でさまざまな案件に携わることができるため、幅広い技術を身につけることができます。
たとえば、最初のプロジェクトでWebアプリ開発を担当し、次の案件でクラウドインフラの構築を学ぶなど、短期間で多様な経験を積むことが可能です。
これは、エンジニアとしての市場価値を高める上で大きなメリットとなります。
3. 業務負担が比較的軽い（受託開発よりも）
受託開発の場合、納期のプレッシャーが大きく、長時間の残業が発生することもあります。
しかし、SESの契約形態では「準委任契約」が一般的なため、納期に追われることが少なく、労働時間が一定であることが多いです。
そのため、ワークライフバランスを重視したいエンジニアにとっては、SESという働き方は魅力的な選択肢の一つです。
4. ITエンジニアとしてのキャリアをスタートしやすい
SESエンジニアとして経験を積んだ後、受託開発企業や自社開発企業に転職することも可能です。
特に、2〜3年の実務経験を積めば、上流工程の案件や年収の高い転職先を選びやすくなるため、キャリアのステップアップの第一歩としてSESを活用するのは合理的な選択と言えます。
SESエンジニアのデメリットとその対策
SESエンジニアの仕事にはメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。ここでは、よくある課題とその解決策について説明します。
1. 現場ガチャ（プロジェクトの当たり外れがある）
SESエンジニアは、クライアントのプロジェクトに派遣されるため、どのような現場に配属されるかは運次第な部分があります。
スキルアップできる案件に入ることもあれば、単調な作業ばかりのプロジェクトにアサインされることもあります。
【解決策】
- 企業選びの際に、配属前にプロジェクト内容を確認できるSES企業を選ぶ
- 自分のスキルや希望を明確に伝え、適切な案件を紹介してもらう
- 技術力を向上させて、希望の案件にアサインされやすくする
2. 給与が上がりにくい
SESエンジニアの給与は、契約単価によって決まるため、一定のスキルレベルに達しないと大幅な昇給が難しいという課題があります。
また、SES企業によっては、契約単価の多くを会社の利益として確保し、エンジニアに還元しないケースもあります。
【解決策】
- 給与交渉が可能なSES企業を選ぶ（契約単価の開示を行っている企業など）
- 転職を視野に入れながら市場価値を高める（クラウド技術、AI、データ分析などのスキルを習得する）
- フリーランスへの転向も検討する（単価が高い案件を直接受けることで収入アップが見込める）
3. クライアント先での待遇が不安定
SESエンジニアは、クライアント企業のプロジェクトに参画する形となるため、自社のオフィスで働く機会が少ないです。
また、クライアントの意向でプロジェクトが突然終了することもあり、業務の継続性に不安を感じることがあります。
【解決策】
- SES企業と契約を結ぶ際に、待機期間中の給与保障があるか確認する
- 複数の技術スキルを習得し、次のプロジェクトをスムーズに見つけられるようにする
- 長期的なキャリアを見据え、受託開発や自社開発への転職の選択肢も検討する
SESエンジニアとして成長するためのポイント
SESエンジニアとしてのキャリアを成功させるためには、日々の業務をこなしながらスキルを高める努力が不可欠です。
特に以下の点を意識すると、成長しやすくなります。
- 自己学習を継続する
- 最新の技術トレンドをキャッチアップする
- AWS、Python、AI関連など、将来性のあるスキルを磨く
- プロジェクトごとの目標を明確にする
- 「この案件ではクラウドのスキルを身につける」など、明確な学習目標を設定する
- 社内外のエンジニアと交流する
- IT勉強会やコミュニティに参加し、知識を共有する
- 業界のトレンドを理解し、市場価値を高める
- キャリアの方向性を常に意識する
- SESとして長く働くのか、受託開発やフリーランスを目指すのかを明確にする
- 3～5年のスパンでキャリアプランを立てる
SESエンジニアは、プロジェクトの変遷が多いため、主体的にキャリアを考え、必要なスキルを磨き続けることが成功への鍵となります。
SESエンジニアの将来性
SESエンジニアの市場動向
SESエンジニアの需要は、日本のIT業界全体の成長とともに増加しています。特に、近年のDX（デジタル・トランスフォーメーション）の推進やクラウド技術の発展により、企業は優秀なエンジニアを確保する必要があります。
総務省の「情報通信白書」や経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、2030年までに日本国内で最大79万人のITエンジニア不足が発生すると予測されています。このため、SESエンジニアのニーズも今後ますます高まることが考えられます。
一方で、SES契約自体の問題点が指摘されることもあり、企業は「質の高いエンジニア」を確保することに重点を置くようになっています。そのため、SESエンジニアとして将来性を確保するには、スキルアップとキャリア設計が重要になります。
SESエンジニアの需要が高まる理由
SESエンジニアの需要が高まる背景には、以下のような要因があります。
1. IT人材不足の深刻化
日本国内のITエンジニア不足は年々深刻化しており、企業は即戦力となるエンジニアを求めています。SESは、プロジェクトごとに必要なスキルを持つエンジニアを確保できるため、多くの企業がSES契約を活用しています。
2. クラウド・AI・DX関連技術の普及
AWSやAzureなどのクラウド技術や、AI、データ分析の技術が急速に発展しています。特にDX（デジタル・トランスフォーメーション）が推進される中で、クラウドインフラの構築やAI開発の経験を持つSESエンジニアの需要が急増しています。
3. 企業の柔軟なリソース確保
システム開発の需要は増え続けていますが、企業がすべてのエンジニアを正社員として雇用するのはコスト的に難しいため、必要なタイミングでエンジニアを確保できるSES契約のメリットが大きくなっています。
4. フリーランス市場の拡大
近年、フリーランスSESエンジニアが増えており、SES企業を経由せずに直接契約を結ぶケースも増えています。エンジニア自身がスキルアップし、高単価案件を獲得できるようになれば、SES市場での活躍の幅も広がります。
SESエンジニアが取るべきキャリア戦略
SESエンジニアとして長期的に活躍するためには、市場の変化を見極め、スキルを磨き続けることが不可欠です。以下のキャリア戦略を考えておくと、将来の選択肢が広がります。